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第 6 回 岡島 悦子 さん


コミュニケーションスキルとは

その他の英語仕事人
岡島 悦子さんインタビュー

岡島 悦子さんについて


筑波大学国際関係学類卒業。三菱商事、ハーバードビジネススクール (MBA)、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2002 年、グロービス・グループの経営人材紹介サービス会社であるグロービス・マネジメント・バンク事業立上げに参画。 2005 年より代表取締役。2007 年独立、プロノバ 設立、同、代表取締役就任。総務省 「ICT ベンチャーの人材確保の在り方に関する研究会」委員。内閣府「地域力再生機構研究会」委員。ダボス会議運営の世界経済フォーラムから「Young Global Leader 2007」に選出される。著書に『ビジネスプロフェッショナルの仕事力』(日本経済新聞社出版)、『戦略コンサルタントに学ぶ 3 倍速仕事力』(PHP 研究所)

(敬称略)
大塚「本日は大変お忙しい中お時間を頂き、ありがとうございました。」
岡島「こちらこそありがとうございます。」
大塚「この『英語仕事人に聞く』のコーナーで以前インタビューしました 石倉洋子 先生が今後日本が競争力を維持していく為には、『常に疑問を持ち、ディスカッションを通じてより価値があるものを作り上げていく』スキルがより重要になってくると仰っていました。岡島さんはヘッドハンターとして活躍されている傍ら、グロービスで経営学を教えられたり、名ファシリテーター (会議の進行役・パネルディスカッションなどで司会等) として数多くのディスカッションを仕切ってこられました。私自身多くの日本人同士の議論に参加したり見てきたりしましたが、どうも議論がかみ合わず、感情的になるケースが多い気がします。岡島さんはどう思われますか。」
岡島「その通りだと思います。日本人は夫婦喧嘩に代表されるようにすぐに感情的になってしまう。何も個人の人格を否定しているわけではないのにすぐそう捉えてしまう。」
大塚「何故ですか?」
岡島「言語的な問題はもちろんあると思いますが、そもそも議論をするという訓練を受けていないからでしょうね。私自身高校は親の転勤の都合で、台湾でアメリカンスクールに通いましたが、まず アメリカ の学校はそもそも多様な人種がいますので、『まず全てを出してみよう。その上で議論をしよう』ということになりますが、日本では暗黙の前提というのがあり、そこには触れずに議論していることが多いと思います。」
大塚「それはいえますね。」
岡島「思っていることが多少違っても気付かないし、例え気付いても声に出さない。例えば『あのレストラン、良かったよ!』という話をしたとします。でも『良かった』では『美味しかった』のか『サービスが良かった』のか『安かったのか』どこが良かったのか分かりません。でも日本では『良かった』で済まされてしまいます。欧米人がひとりでもいればその確認作業に入りますがずっと同じコミュニティーにいる人は『なんとなく』で通ってしまいます。」
大塚「そんなことを確認しようものなら大変なことになります。いまであれば KY (空気読めない) 認定を受けてしまいます (笑)。」
岡島「確かに『いちいちうるさいな!』といわれてしまいますね (笑)。しかし時代は急速に変わってきています。終身雇用の時代には、暗黙のルール、ものごとの進め方等、その会社独自のお作法があり、いちいち説明しなくても大丈夫でした。しかし、近年今までコア人材として採用してこなかった女性、中途社員や外国人が入ってくるようになり、いままでのやり方で踏襲しようとしても『おいおい分からないよ!』と、きちんと議論をしなければ前に進めない時代になってしまいました。」
大塚「今まで求められていなかったスキルが突然必要になってきたわけですね。会社が突然外資系企業に買収されるケースも増えてきました。」

ますます重要になるコミュニケーション能力
岡島「そうです。人に分かるように説明するスキルが今後ますます重要になってきます。例えば『この間も言ったけどさ。。。』からはじめるひとは良くいますが『そんなの忘れているし、そもそもその時ちゃんと説明した?』と思ってしまいます。あとは話していて『共通言語 (論点・事実関係) がずれているな』と感じたときは質問をすることも大切です。『これってこういう意味でおっしゃっているのでしょうか?』など。特に、パネルディスカッションなどをする場合には、パネラーどうしが共通言語をもっていたとしても、参加者の方々に、真意が伝わりにくそうな場合には、説明を加えたり、再定義をするような質問をパネラーにさせていただいたりすることが重要だと思っています。」
大塚「そういった質問は非常に大切だと思います。説明する側は分かりやすく説明する責任があります。でも説明する側は相手がどこまで知っていてどこが理解できないか探りながら話します。そんな中、質問されると『ああ、そこが分からなかったんだ。そこをもっと詳しく話そう。』と思います。そういったキャッチボールの中で理解を深めていく。聞く側も大きな責任がある思います。」
岡島「その通りですね。でも質問の仕方が分からない日本人は多いですね。」
大塚「ダメな質問例というのはありますか?」
岡島「私はよくセミナーをやりますが、最後に質問を取ると「それ違うでしょ!」と思うような質問を良く受けます。大体 3 つのパターンに集約されると思います。一番目は自分はこんなことを知っているぞとひけらかしたいパターンで、質問ではなく自慢です。」
大塚「これはいますね (笑)!」
岡島「二つ目は話を聞いていなく、質問ばかり考えてる人。『それ説明したでしょう!』という質問をします。」
大塚「話をきちんと聞いていないとそもそも質問は思いつかないと思うんですけど。。。」
岡島「結構多いんですよ。こういった人は得てして話していたことと質問を関連付けることが出来ません。三つ目は自分だけに利益のある質問をする人。」
大塚「アメリカ人にも多いですね。そういう人は。」
岡島「そうです。こういう人は得てして他の人の質問と関連付けられない。皆にとって有益でない個人的な質問は終わってから直接聞きに来るべきです。」
大塚「質問ができないのは Critical Thinking (物事を無批判・無判断に受け入れてしまうのではなく、「これは本当なのだろうか、真実なのだろうか、価値あるものだろうか」等と吟味した上で自分の中に取り込むという思考法) が習慣づいてないからだと思います。Critical Thinking の代表的な考え方をフィルターにしながら話を聞いていれば質問はいくらでも出てくると思います。」
岡島「同感ですね。それに場数も大切です。どこかで一歩目を踏み出さなければなりません。マッキンゼーでは『発言しなければこの場を去れ』的なルールがあり、Contribution は当たり前というマインドを叩き込まれていました。会議はいつも真剣勝負です。『ここで価値を提供しないと次は呼ばれない。』と常に自分自身に言い聞かせて臨んでいます。」
大塚「それくらいの覚悟を持つことが出来れば何がなんでも Contribute しますね。」
岡島「とにかく試してみるしかないと思います。Trial & Error しかない。。。」
大塚「一歩踏み出して質問したとして、自分がいい質問をしたかはどのように分かるのでしょうか?」
岡島「そうですね。周りにいた人に聞いてみるとか。。。でも正直に言ってくれない可能性がありますよね。相手がちゃんと質問に答えてくれたかや相手の答える態度をみるのも良いバロメーターになるかもしれません。一番やってはいけないのは質問をしただけで満足してしまい、相手の答えを聞いていないことです (笑)。」
大塚ビジネススクール 時代、初めはよくそれをやってしまいました。とにかく発言するだけで極度の緊張状態。発言後に頭が真っ白になってしまいます (笑)。」
岡島「もちろん私も失敗は数え切れないほどしていますし、今でもします。結局やって恥をかかなければ学びません!」
大塚「私はこの仕事を 5 年以上やってきましたが日本人の『恥をかきたくない、失敗できない』精神の壁は相当厚いと感じます。私は帰国子女なので昔から分からないことは『分からない!』とはっきりというようにしてきましたが、15 年以上経った今でも友人に『お前、あんなことも分からなかったよな!』とバカにされます。多分一生言われるでしょう (笑)。」
岡島「それはひどいですね。」
大塚「そんな社会で生まれ育ってきて大人になって失敗しなさいと言われて出来るはずがありません。私のビジネスは英語教育ですが、英語以前にまずはそういったマインドセットを変えないといけないと感じます。これはもはや言語の問題ではありません。」
岡島「全く同感ですね。結局日本語で出来ないことを英語で出来るはずはありません。よく『英語は難しい』という方はいますが『それだったら同時通訳を入れれば出来るの?』と聞きたいときがあります。そこはきちんと理解できないとダメです。」
大塚「でも私は主に MBA 留学 している日本人を沢山見てきましたが、その壁を越えると、驚くくらいそういったコミュニケーション方法が出来るようになります。私、アメリカ の大学院に留学して感じたのが日本人の総合力は相当なものだということでした。私自身、日本では中・高・大学と成績は常に真ん中でやってきましたが アメリカ のトップクラスの ビジネススクール でもそこそこ頑張っていける。いま日本悲観論が充満していますが、日本人も捨てたものではないと思うんですよ。」
岡島「私は国籍でくくるのではなく、性格と資質でくくるようにしています。例えば中国人と日本人は同じアジア人ながら性格も資質もまるで違います。日本人は特徴として協調性やチームワークを行うことが美しいとされてきました。これは右肩上がりの時代は良かったかもしれない。しかし、もしゲームのルールがチームワークで戦うのではなくなってきたのであれば変えざるを得ない。一概に日本人がダメということは絶対にないですがプレゼンテーションが下手というか自分達の良さをアピールする力は明らかに弱い。」
大塚「それは弱いというより『言わないのが美徳』と思われている側面が強いと思います。」
岡島「でも今はそういう時代ではないんですよ。パラダイムは変わっている、と考えたほうがいい。先程もいいましたがこれからは『分かってくれよ』では通用しない時代になってきます。これから必要になってくる能力がコンテンツとプレゼンテーション力の掛け合わせたものだと思います。大ざっぱにいえば、欧米人は低いコンテンツに高いプレゼンテーション力。日本人は高いコンテンツに低いプレゼンテーション力ということになります。日本にはよい技術が沢山あります。例えばソーラーパネルの技術。アフリカに持っていけば町が自立できます。プレゼンテーション力はちょっとしたトレーニングで身につけることが出来るのに『おれたちは言わないのが美徳』といっていると世界から声すらかけられなくなってしまいます。」
大塚「そう考えると今後は組織力というより個人のスキルを上げていくのがますます重要になってきますね。」
岡島「近い将来、5 点満点で全ての分野で 3 点の人はどんどんアウトソースされ、いらなくなる時代が来ると思います。多少でこぼこしていても強いところを伸ばしていく生き方に早めにシフトしておいた方がいいと思います。」

「キャリアデザイン」ではなく「キャリアドリフト」
大塚「以前岡島さんがあるセミナーで『キャリアドリフト』について話された記事を読みました。「これになりたい!」と確固たる目標を決め、それに向かってキャリアを考えるキャリアデザインという手法に対して、流れに任せてその時の目の前に来た波に乗りながらキャリアを乗り換えていくキャリアドリフトの方が多くの人の実態に近いと思います。でもほとんどの人がこういったチャンスを気付かないで逃してしまっていると思います。こういった波を逃さない為にどのような心がけが必要でしょうか?」
岡島「まず第一に自分は何者か? 何をする為に生きているのか、"My mission" について良く考えていないと飛びつく波は分からないと思います。良くありがちなのが『投資銀行やコンサルティングは給与が高いし、素敵!』という観点でキャリアを考えてもダメなのです。ミッションとは親の介護をしたからとか子供の頃の経験等原体験から来るものであると思います。」
大塚「そうでしょうね。しかし、自分と向き合う作業ってかなり苦痛で、"My mission" はなかなか出てくるものではないと思うんですよ。」
岡島「よく気持ち悪くなるくらい考える人がいますが、毎日考えてもダメです。節目節目で考えるべきです。分からない場合はとりあえず目の前にある目標に向かって死に物狂いで走ってみる。すると 3 年くらいで飽きてしまったり Burn-out してしまったりします。ちょっと緩くなってきたと思ったときにまた考える。すると次の波がすぐそばに来ていたりするのです。問題なのは思いっきり走っていないのに何か違うのではないかと思ってゆるゆると何もしない人です。人間そんなに器用ではありません。そんなときに波など出てくるわけはないし、例え来ていたとしても気付きません。」
大塚「岡島さんはどうやってキャリアドリフトされたのでしょうか?」
岡島「私はマッキンゼー時代からずっと問題解決をやってきました。いろいろな経営者から相談を受ける中で、後継者問題に多くの経営者が悩んでいるということが分かりました。結局行き着くところ、最後はお金ではなく、人だということが分かります。経営者がいないとか経営者候補がいないと嘆いていても何も問題解決になりません。だったらそういう人を育てましょうよということになりヘッドハンターをやることになりました。」
大塚「そこに波があったんですね。」
岡島「そうです。私自身、人に大変興味があります。個人的には人からありがたがられるほうがお金をもらうより断然うれしい。どこかで『岡島さんのお陰だよ』と言われたいと思っています。ヘットハンティングに求められるスキルが『問題解決能力 × 人』だと気付いたとき、『これだ!』と思いました。まずポテンシャルのある人を目利きする。そしてチャンスをあげることで可能性をうんと広げてあげる。そういったチャンスメーカーのようなことをやっていきたいと思っています。」
大塚「素晴らしいですね。岡島さんのようなハートのある方がいると日本に対する希望が持てます。本日は本当にありがとうございました。」
 

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